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    「今、あんたの便をしらべてみたがね」

    「御焼香を。――どうぞ、お近いところから御順に」

    徳次は自分のことのやうに熱心に路順を考へた。

    と、大声で訊いた。

    と、きよろりとした目つきに返つた徳次は、立ちはだかつたやうな恰好になりながら、房一の傍に停つて訊いた。

    と、小谷はひとり言にしては大きい声で云つた。が、代りがないので又水の中へ放つた。

    その時にはもう手にした洗ひ道具をはふり出して、河原の縁をその方に向けて一散に走つて行く徳次の姿が見られた。両岸の間に太い針金が張りわたらせてあつて、船に乗つた人は綱を手繰りながら渡る仕掛になつている。ちやうど、船はこちら側にあつた。徳次が向ふ岸まで船を手繰たぐり寄せて行つた頃には、房一はやつとこさ河原に降り立つて、近づく徳次に向つて親しみ深い微笑を浮かべていた。その微笑は彼特有の円々としたどつか厚みのあるものだつた。房一の傍には白と茶との斑犬がついていた。

    「だつて、喜作さんはこの土地にはいないでせう」

    と、云つた。

    「それは惜しかつたですな。私などとちがつて学資の心配はなかつたでせうし」

    「水はこんなにきれいでたつぷりしているだらう。鯉だつて鮒だつて、鯰なまずも、ハヤも、鰻うなぎ、アカハラ、それに鮎は名物だらう。こんなに沢山魚のいる河が他にありますかい」

    「――へえ、まだお帰りぢやないのかね」

    「御機嫌だつたね」

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